映画に出てくるイイ男を観よう!!『スウィング・キッズ』

『スウィング・キッズ』

アメリカ(1993年)
出演:ロバート・ショーン・レナード、クリスチャン・ベール、ケネス・ブラナー
監督:トーマス・カーター

3人の若者が、青春を奪われようとしていた。
昼は大学に通い、夜はダンスホールに繰り出す「スウィング・キッズ」たち。
彼らは禁止された敵国の音楽を愛し、自由を模索する。
しかし、一人、また一人とヒトラー・ユーゲントに入団していき、
ユダヤの血を持つ仲間は自殺を選ぶ。
はたして、彼らの自由は?友情は・・・?

ナチスを題材にする映画は沢山あります。
文学的に攻めるもの、残酷さ、リアルさを追求するもの、
でも私が個人的に評価したいのは、今回の映画のような
個人に焦点を当てた作品です。

「マイライフイズビューティフル」も同じ種類だと思うのですが、
一見「甘い」と思われそうなストーリー構成、展開、
悲劇的すぎないラストシーンの中に、大事なメッセージが込められています。
「アメリカ至上主義だ」だとか、「こんな話ない」
と言ってしまえばお終いですが、
たとえば子供に『シンドラーのリスと』と『スウィング・キッズ』どちらを見せるかと
考えれば、私は後者を選びます。

想像の余地を残すことは、大切なことです。
観客の思考によって、作品が完成する。
ナチスによる惨殺や、死体の山を何度も映像で見せられるより、
感情移入した主人公が、殺されに行ってしまう後姿を見て、
心の底から、悲しい気持ちになれば、その映画は成功だと思うのです。

さて、この映画のイイ男は、主人公のジャズ仲間の一人を演じる
イギリス俳優、クリスチャン・ベール。
美しい金髪、すらりと伸びた背、聡明な頭脳。
いかにもヒトラー・ユーゲントに歓迎されそうな風貌の彼は、
ある事件をきっかけにユーゲントに入団してしまいます。

最初は「演技」をしているだけだと言っていたはずが、
だんだんとヒトラーの教育に蝕まれていき、洗脳されていく。
硬く、冷たくなっていく心を、クリスチャン・ベールはとてもリアルに演じています。
人間味を捨てられない主人公と対照的に、
彼の心の変化は時代を表していきます。
男が持つ、自尊心や虚栄心、闘争本能、
そういったものの恐ろしさを、感じさせてくれる名演技といえるでしょう。

この作品の最大の見せ場は、
ヒトラー・ユーゲントに入団したはずの主人公が、
ダンスホールに行き、自分を取り戻していくシーンです。
主人公、ロバート・ショーン・レナードの演技、そして音楽、
すべては素晴らしく、心を揺さぶる名場面といえます。

そして、ラストシーン。
言ってしまえばベタな言葉ですが、
やはり、ロバート・ショーン・レナードと、クリスチャン・ベールの名演が光ります。
何をもってしても、奪えないもの。捨てられないもの。捨ててはいけないもの。
この映画は、それを再確認させてくれることでしょう。

なかなか手に入りにくい作品でしょうが、見る価値はある一本です。
どうぞ、ご覧ください。